2012/02/03
建築のゆくえ
建築家の内藤さんの講演のタイトルと同じです。
建築というもの、建築をする、という職能のこと、これからどうなるんだろう、というのがテーマの講演会です。
内藤さんの話をこの時期聴けたのはとても良かったです。久々の講演会参加でしたが、内藤さんの話の内容は普段建築家が考えてはいるがその考えがまとまらない、正にそれでした。
今のままだったら、建築家という職能は、本当に無くなってしまうでしょう、と内藤さんは警鐘を鳴らします。その一方で内藤さんは一度建築を離れてあらゆる分野の人々と出会い知り合い話す場を得て、それを踏まえて、建築家ほど法律もある程度知っていて、経済のこともある程度はわかり、建築についても構造も、設備のことも理解し、人の話に耳を傾け良く聴き、様々な人々とコミュニケーションを図り、まとめていき仕事を進める、芸術のことも、自然のことも、文学のことも、メカニックなことも理解しようとし、また知っている、こんな人間は建築家を他に置いていないと断言できる、と断言していました。
結局は自己表現、自己主張、いくらいろんなことがわかっても、自分のテリトリーでしかモノを見てこなかった、モノを作ってこなかったから相手にされていないんじゃないだろうか、とも言っていました。法律の事を知っていると言っても、それは、せいぜい建築基準法とその関連法案くらい。せめて国土交通六法くらいは勉強しないと、と。要は国土がどうやってなされているか、社会資本はどういう仕組みなのか知らなければならない、勉強しなければならない、そうしないと、周囲の人達と同じ土俵に立てない、つまり、いつまでたっても建築家は、今回で言う復興の場に呼んでもらえないだろうと。
もちろん、法律を今よりもっと広く深く見さえすれば良いのかと言ったら、決してそれだけじゃないと思います。今まで以上に人々に寄り添い、意見に耳を傾けるのは当然のこと。もっとそれを積極的にやっていかなければいけません。
内藤さんは大きなこと言うと同時に、具体的に物事を判断し述べていたところが良かったと思います。同じく世界的建築家の伊東豊雄さんがもっと大きな目で建築全体を見て欲しいとおっしゃっていましたが、そのことも勿論大切なのですが、内藤さんは更に具体的に法律の話や、私権についての意見を交えたり、具体的にわかりやすく論じます。何か橋本大阪市長に似てるな、と途中思いました。橋本さんも夢を大きく語る一方で、その夢に最も速く辿り着くためには、といつも思っているからなのかとは思うのですが、それぞれの夢について具体的に、じゃあどうやったら具体的に一番速く辿り着けるのか、それも同時に述べています。脱原発の市民投票は良いが、元々市は脱原発論なのに、その上で更に5億もかかる住民投票をする、このことが本当に良いことなのか、と冷静に語りかけています。最終的な夢の所在をよく知った人だなあと思い、この二人共通しているなと思った次第だったのです。
そもそも建築家を主語として話始めるのも実は違っているのかも知れません。建物の側に立って、そして人間の側に立って物事考え発言をする、もっともっとそうしないといけません、と思うのです。昔で言うところの石工や、木工大工、大工棟梁が建築家という概念をまとった人達だったのでは?と思い、もしそれが本当なら、建築家という職能は、耐用年限が来ているのではなくて、終わりが来てしまっていたのではないか?と内藤さんはおっしゃっていました。ボクは、耐用年限とかそういうことではなく、日本における建築家という職能が今、正に生まれるところなのではないかな、と思っています。
日本の地震だけじゃない、もっと広く見れば、今現在、死に直面している人は山ほどいる。そこに建築家の入り込む余地はあるのか?いやないだろう。本当にないのか?建築家とか言ってるからダメなんじゃないの?いや、建築家としてだろうが人間としてだろうが、やるべき事は山のようにある。
内藤さんは、ひょっとしたら、建築家としてやれる事は日本だけじゃなくて、世界中を舞台としてまだまだ一杯あるんだよ、地球上の問題を解決に導くことができるようにならなきゃダメだぞ、ということを言いたかったのかも知れないなあ、とふと思いました。
最後に内藤さんが寅さんに変身。会場は大いに盛り上がり幕を閉じました。
JIAの佐藤さんに久しぶりに、そしてしずりんさんにも会場でお会いできたのも懐かしく良かったです。
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